理事長所信

一般社団法人甲府青年会議所

第70代理事長

三澤 眞人

【はじめに】

今、日本は、異常気象により多発する災害や新型コロナウイルスの感染拡大など、国難とも呼べる課題に直面しています。私たちを取り巻く環境や生活様式は劇的に変化しました。時代はひとつの節目を迎えており、これまでの常識が通用しない未知の領域へ突入したと言っても過言ではありません。そして2020年は、東京オリンピックの延期をはじめ、全国各地で様々なスポーツやイベントが中止となりました。私たち青年会議所においても、ASPACやサマーコンファレンスなど多くの事業が、中止又は縮小を余儀なくされました。
そんな今だからこそ、私は、青年会議所の設立のときに思いをはせます。
「新日本の再建は我々青年の仕事である。更めて述べる迄もなく今日の日本の実情は極めて苦難に満ちている。」
1949年、日本に青年会議所が誕生した際の設立趣意書の一文です。戦後の荒廃した社会の中で、日本の再建という新たな可能性を切り拓くための「挑戦」をすべく、青年会議所が設立されました。そして、そのわずか2年後の1951年、志高き17名の青年が集い、日本で13番目の青年会議所として、甲府青年会議所が設立されました。
この青年会議所の設立は、青年が、苦しいときこそ歩みを止めることなく、時代の先駆者として挑戦をし続けなければならないということを物語っているように感じます。
国難とも呼べる状況に直面している今だからこそ、青年が問題意識を持ち、自分たちの地域、国、そして世界を良くするために挑戦し、地域社会に大きな成果を残すことが必要です。そして、このまちで生まれ、このまちに育てられてきた私たち青年が、英知と勇気と情熱を集結させて挑戦することは、青年会議所が掲げる崇高な理念である「明るい豊かな社会」の実現につながっていくのではないでしょうか。
現在、各分野において様々な団体が設立され、それぞれが理想とする社会の実現に向けて活動が行われています。同じように、青年会議所も「明るい豊かな社会」の実現を理念に、日本国内だけではなく国際的な連携を持って活動しています。その中で、私たち甲府青年会議所は、甲府市・甲斐市・中央市・昭和町の三市一町「山の都」エリアを拠点に、設立当初の先人たちの想いを引継ぎながら、69年の長きにわたり運動を展開してまいりました。今、ひとつの時代の節目とともに、私たちもまた、70周年という節目を迎えます。業種も立場も異なる、多種多様な青年で構成された私たちをつなぐものは、「この地域のために」という想いです。多様性を活かし、あらゆる物事を多角的に捉えながら型にはまらない柔軟な発想で、青年会議所らしく、地域の諸問題に果敢に挑んでいくことにより、この地域をさらに発展させていくことができると考えます。

【未来を担う青少年の育成】

近年では様々な技術が急速に進歩することで、子どもたちは日々あふれるような情報や知識を簡単に得ることができます。そして、はるか遠方の人と簡単に交流することや疑似的な体験をすることで、様々なことに興味を持つ機会にも恵まれております。しかしながらそれらは、機械的な情報交換や知識の蓄えに終わってしまっているのではないでしょうか。「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、書物や動画で見ることと、実際に体験することの間には大きな差があります。自分で体験することで、自分なりの感想や考えが生まれ、自分だけのオリジナルな学びとして活かすことができるようになります。
また、私が青少年を育成するうえで重要に捉えていることは「心」の育成です。これからの時代は、多種多様な文化や価値観を持った人と接する機会がさらに増える社会になると考えます。他者との違いを認め協働する心、困難や挫折に直面しても最後まで粘り強く諦めない心など、しなやかで豊かな「心」の育成は、学力・身体能力・生きる力といった、あらゆる力の礎となります。
人とのふれあいや社会での実体験を通して、子どもたちの主体性や協調性を高める事業を行い青少年の「心」を育成していきます。この地域の未来を担うであろう青少年に成長の機会を提供することは、次世代のリーダーを育成し、私たちが目指す「明るい豊かな社会」の実現に近づけることができます。

【地域の魅力を活かしたまちづくり】

昨今、私たちの住む「山の都」エリアでも人口減少が大きな問題として取り上げられていますが、完成がすぐ近くまできている中部横断道やリニア中央新幹線の開通は、人口増加や経済発展のトリガーとなると予想されます。また、武田信玄公生誕500年や2021年開催となったオリンピックは、国内外からの交流人口の拡大による地域活性化の重要な機会になるものと考えます。そのような素晴らしい機会を活かすためにも、まずはこのまちで暮らす私たち自身がまちを好きになり、まちに対する想いを変えていかなければならないのではないでしょうか。
このまちには、地域資源・産業・文化といった多くの魅力が存在します。しかし、その魅力を知る機会が十分とは言えず、魅力を活かせていないのが現状であります。また、さらなる「山の都」の発展のためには、従来の多くの人を集めるといったまちづくりの観点や実践ではなく、多くの人を巻き込むという観点でまちづくりを実践し、まちの魅力を地域に浸透させていくことが必要だと考えます。

【ワンチームは一日にしてならず】

近年の青年会議所は、アカデミー会員の割合が多くなっています。それに伴い、在籍している期間内での会員同士の関わりが希薄化し、青年会議所活動の意義や魅力が上手く伝わらないまま卒業してしまう会員も少なくはありません。永続的に発展していく組織を目指すためには、青年会議所活動の意義や魅力を会員一人ひとりに伝えていくことが必要です。
しかし、青年会議所活動の意義を伝えようとどんなに説明しても、頭だけで組織の意義や魅力を理解してもらうことは難しいと考えます。誰かの心を動かすためには、「想い」や「言葉」だけでは足りません。やはり、そこには「行動」をともにすることが必要であります。限られた時間の中で仲間とともに活動することは、何物にも代えがたいチームとしての絆をつくり出し、組織をひとつにします。また、チームとしてひとつの目標を全員で成し遂げる過程で、各々のリーダーシップやフォロワーシップが発揮され、会員一人ひとりの多種多様な個性も活きてくるものと考えます。
私たちは組織をより良い未来へ動かしていかなければなりません。ワンチーム精神のもと、アカデミー会員から卒業生までがともに活動する機会や自ら積極的に青年会議所活動に取り組む機会をつくることで、いずれは強い絆で結ばれ一体感を持った組織の構築を目指します。

【組織を支える屋台骨】

青年会議所活動の本質は、会議が基盤となっています。例会、事業、人事案件など、そのほとんどが会議によって決定されています。そして、総会や理事会といった諸会議にはそれぞれ目的があります。その目的を把握し、組織や会員にとってより高い効果が得られるようにするためにも、規律のある組織運営が必要であります。組織に規律がなければ、報告・連絡・相談も円滑に行われなくなり、様々なものに無駄が生まれ非効率化してしまいます。それは、個々の意識を下げてしまい、組織運営に支障をきたします。諸会議・各例会・各事業が最大限の効果を発揮できるよう、諸会議の設営や事務局及び備品の管理を行います。
また、(社)甲府青年会議所の運動や活動を対内外に発信する広報については、対外的にこの組織の活動を知っていただくということだけではなく、理事役員や各委員会との連携を図り、正確かつ魅力的な情報発信を行うことができれば、組織全体のモチベーションを高めることにつながります。
当たり前のことが当たり前ではなくなってきている時代だからこそ、組織の運動展開と会員一人ひとりが活動しやすい環境づくりを行っていきます。

【出向と渉外は自ら手に入れることのできる機会】

全世界どの青年会議所に入会しても「個人の機会」「地域の機会」「国際の機会」「ビジネスの機会」といった4つの機会があります。それらの機会は、会員であれば誰にも平等でありますが、その結果や成長は不平等であります。なぜならば、それらの機会は偶然めぐってくるチャンス(好機)ではなく、自らの努力により手に入れるオポチュニティー(機会)だからです。現在の(社)甲府青年会議所は、会員の約半数が在籍3年未満のアカデミー会員であり、経験豊富な会員が少なくなってきています。また、入会年齢が上がってきている現状においては、少ない在籍年数の中でひとつでも多くの機会を得ることが必要です。
所属する青年会議所内での活動でも多くの機会を得ることはできますが、より多くの機会を得ていただけるのは、国際組織であり日本全国に692の各地青年会議所が存在する青年会議所のスケールメリットでもある出向や渉外事業への参加であります。積極的に出向や渉外事業へ参加することは、JC三信条である「個人の修練」「社会への奉仕」「世界との友情」を符合し、JC運動の根幹に触れる機会をより多く得ることができます。
また、2021年は公益社団法人日本青年会議所関東地区協議会へ会長を輩出いたします。「誰かがやる、誰かが行く」という考え方ではなく「みんなでやる、みんなで行く」という意識を持ち出向者を支援していくことが、ひとりの挑戦を組織の挑戦に昇華させます。
そして、その挑戦は地域を担う青年経済人としての私たちに大きな経験を与えてくれる機会となります。

【地域になくてはならない組織】

青年会議所は「何でも屋」ではない。しかし、「常に地域から頼られる組織」であるべきだと私は考えます。行政、企業、地域住民がまちづくりや諸問題の解決を考えたときに、相談相手として最初に思い浮かぶ組織が、(社)甲府青年会議所でありたいと考えます。各々の環境を活かし、同じ目的を共有し相互理解を深めることで、各種事業を地域に広く効果的に波及させることができます。また、相互理解を深めることは、信頼関係を構築し、お互いがお互いの良き支援者となる相互支援につながります。
地域との関わりを通じて、自らの運動を見つめ直す機会をつくり、私たちの関わる事業が地域に必要な事業なのかを意識しながら、事業そのものの公益性を見つめ直すことを怠らず、地域から頼られ求められる(社)甲府青年会議所の確立を目指してまいります。

【創立70周年という機会】

(社)甲府青年会議所は、「明るい豊かな社会」実現という崇高な理念を掲げ、地域社会の発展のために様々な運動を展開してまいりました。今もなお、私たちが地域に根差し活動できているのは、先輩方が変化や失敗を恐れずに挑戦し、時代に即した運動展開を行ってきた実績があるからであると考えます。私たちはこれからも先輩方が残してきた足跡、精神、誇りをしっかりと受け継ぎ、どんな状況であろうとも前に歩み続けなければなりません。激動する社会の中、(社)甲府青年会議所は70周年という節目を迎えます。激動の時代だからこそ、先輩方の創り上げてきた歴史の重みに感謝するとともに、新時代の旗手として、一人ひとりが会員としての誇りを持つことが必要です。
70周年という機会を活用し前例や慣例に捉われることなく、未来に向けた明確なビジョンを対内外に発信し、「明るい豊かな社会」の実現につなげます。

【全会員が会員拡大に取り組む】

青年会議所には40歳で卒業というルールがあり、新たな仲間が入会しなければ組織自体が継続していかないという特徴があります。昨年も同じ志を持った多くの仲間が増えましたが、全国的に青年会議所の会員が減少しているという現状を踏まえると、引き続き会員拡大に取り組んでいかなければなりません。
会員拡大に取り組み一定数の会員を維持することは、組織を存続させることだけではなく、私たちの運動の原動力となります。そして、会員数の増加は、地域に対する私たちの活動・運動の影響力を増幅させ、地域の未来への可能性を広げることにつながります。また、新たな仲間とともに活動することは、会員や組織に新たな発想や価値観、刺激をもたらし、組織の活性化にもつながると考えます。
2021年も多くの仲間を迎え入れられるよう、所属する会員一人ひとりが会員拡大への意識を高めます。これからの地域の未来を本気で考え、なぜ拡大が必要なのかを会員一人ひとりが理解し、情熱と気概をもって全会員で拡大に取り組みます。

【結びに】

人は失敗や絶望によって、足を止めるのではありません。挑戦することを諦めて足を止めるのです。
人は成功や希望があるから、前に進むのではありません。挑戦するという意志を持って前に進むのです。
足を進めるも止めるも、全ては自分次第です。40歳までという限られた時間があるからこそ、挑戦し続けようではありませんか。
答えが見えなくても、私たちの歩む道は必ずより良い未来につながっています。
青年らしく英知と勇気と情熱を持って挑戦しよう。どんなに困難な道のりでも仲間と手を取り合えば、もう一歩踏み出せる。その一歩が踏み出せたとき、その瞬間から未来(あした)は変わる。

「挑戦は未来(あした)をつくるはじまりである。新たな一歩をともに歩もう。」